〔2025年7月3日リリース〕金属ストレス下で活性化されるタンパク質フォールディング促進剤の開発に成功―金属イオン捕捉とフォールディング促進の二刀流による変性疾患治療への展開へ期待―
金属ストレス下で活性化されるタンパク質フォールディング促進剤の開発に成功
―金属イオン捕捉とフォールディング促進の二刀流による変性疾患治療への展開へ期待―
ポイント
- タンパク質は細胞内でポリペプチド鎖として合成され、伸びきった変性状態から、球状などの特定の三次元構造(天然構造)へと折り畳まるフォールディング注1)過程を経て固有の機能を獲得します。過剰な金属イオンの蓄積による金属ストレス注2)はタンパク質のミスフォールディング注1)を引き起こすため、神経変性疾患注3)との関連が報告されています。本研究では、金属ストレス下でタンパク質フォールディングを効率的に促進する人工分子cyclam-SS(サイクラム?エスエス)を開発しました。
- 細胞内のタンパク質フォールディングは分子シャペロン注4)や酵素によって制御されており、フォールディングを阻害する細胞ストレス注2)が生じた際も、ストレスに応答して分子シャペロン?酵素が活性化されることで天然構造へのフォールディングが維持されます。この生体内のフォールディング機構から着想を得て、人工分子による「ストレス応答性フォールディング促進」を初めて実証しました。
- 金属イオン結合部位とフォールディング促進部位を連結することでcyclam-SSを設計しました。cyclam-SSは、金属ストレス下で(i)金属イオン捕捉によるタンパク質ミスフォールディング抑制効果と(ii)反応性向上によるフォールディング促進効果を示す双機能性(bifunctional)注5)分子であることを見出しました。
- 金属ストレスの軽減には目的の金属イオンと強く結合して体外へ排出するキレート化合物注6)が用いられますが、金属ストレス下でのタンパク質の天然構造への誘導は困難でした。本研究で開発したcyclam-SSは、金属ストレスやそれに伴うタンパク質ミスフォールディングに関連する疾患治療のための新たな技術基盤となります。
本研究成果は 2025年6月30日(月)、「Angewandte Chemie」のオンライン版て?公開されます。
論文タイトル:Metal-Responsive Up-regulation of Bifunctional Disulfides for Suppressing Protein Misfolding and Promoting Oxidative Folding
著者: Keita Mori, Tsubura Kuramochi, Motonori Matsusaki, Yuki Hashiguchi, Masaki Okumura, Tomohide Saio, Yoshiaki Furukawa, Kenta Arai, Takahiro Muraoka
*責任著者 森圭太、村岡貴博
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/anie.202502187
概要: 新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学研究院の森圭太特任助教(JSPS-CPD)、同研究院応用化学部門の村岡貴博教授、東北大学学際科学フロン